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連載2024.01.15

愛の心で一服㉚(愛の手紙コンクール入賞作品より)

小さな掌(てのひら)ポッカポカ

前略、あの頃はまだ小学生だった君たち兄弟と出会ったのは約七年前の冬の夕暮のバス停でした。

母の通院帰りでした。母は足が悪くバスの乗降口の段差には悪戦苦闘(あくせんくとう)。

だからいつも最後に乗ります。あの日も数人の人たちや君たちの後ろに並びました。

すると君たちは私たちの後ろへ回ったのです。

「おばちゃんたち時間かかるから先に乗って。ありがとうね。」君たちは頷(うなず)いて先に乗りました。

私たちはいつもの様に、母はドアの手摺(てすり)に摑(つか)まり私が下から腰を押し上げていると

お兄ちゃんが母の横をするりと降りてきて私と一緒に母のお尻を押し上げてくれました。

御陰(おかげ)で楽に乗れました。寒い夕暮でしたが君たちのやさしい思いやりで母も私も心ポカポカになりました。

あの日の思い出は今も母と私の宝物です。

この手紙は決して君たちには届きませんが心から信じています。

君たちには素敵(すてき)な大人の人生がまっている事を。

かしこ

(応募時大阪府64歳)ペンネーム 桜木のん